スカイ・クロラ / The Sky Crawler

スカイ・クロラ / The Sky Crawler
★★
監督:押井守
原作:森博嗣
脚色:伊藤ちひろ
音楽:川井憲二
声の出演:菊地凛子, 加瀬亮, 栗山千明, 谷原章介, 榊原良子

幸か不幸か「押井守の新作」という前情報しか知らなかったので「キルドレ」の設定や世界観を完全にまっさらな状態で見られたのですね。ところがあとでCM見ると、この辺のことが完全にオープンになって宣伝されているのですね。「キルドレ」がどんな存在であるかが明かされる中盤で物語の歯車が完全にはまって「そういうことだったのか」とスッキリするようなつくりになっているので、これって「実はブルース・ウィリスが○○なんですよ」とCMしてるようなもんだと思うんですがどうなんでしょ?

で、本編の話。「キルドレ」の設定からしてわかるとおりこれは『うる星やつらビューティフル・ドリーマー』の語り直しなんですね。ただあちらが「楽しい文化祭が毎日続けばいいのに」という陽の繰り返しであったのに対して、こちらは陰の繰り返しになっていて、エンターテイメントのために行われる戦争とそのために繰り返して使われる命の物語には虚しさしか感じませんでした。

イノセンス』でも何度も同じ場面を繰り返すシークエンスがありましたが、押井監督は「繰り返すこと」への何か執着のようなものがあるのでしょうか。他の映画でもそうであったようにこの映画でも「繰り返し」をやめて、一歩前に出ることに意味を見出しているように思えました。

Ghost in the Shell』『イノセンス』とエンターテイメントからどんどん離れていって、無駄な引用ばかりが増えていったこの監督にしては精一杯のわかりやすいエンターテイメントに針を振っているような気はしますが、感情が表に出ない自動人形のような人間たちの物語に面白みを見出すことは出来ませんでした。

最後にこれ、父親殺しの話でもあるのですね(敵軍のエースパイロットが通称「ティーチャー」と呼ばれているのですが、映画の最後に主人公が「ティーチャー」を撃墜に向かう前に英語で"father"を墜としに行く、と言っているので)。やはり男は父親を乗り越えないとイカンのでしょうか。