ハンコック

ハンコック(Hancock)
★★★☆
監督:ピーター・バーグ
出演:ウィル・スミス, シャーリーズ・セロン, ジェイソン・ベイトマン

スーパーヒーローをアメリカという国そのものの象徴として読み解くのは珍しくない手法です。頼まれてもいないのにヒーロー気取りで悪人をやっつけて他人に迷惑かける超人というのは、まさに、よその国の紛争にちょっかいを出しては被害を出すアメリカそのものの話だと思いました。
ということで、この作品は嫌われ者のアメリカがヒーローとして信頼されるべき存在になる過程を描く話なのだと思ってました、途中まで。
ところがこのテーマが意外に早く終わってしまってこの後どうするのかなと思っていたところで「冷蔵庫ふっとばし」事件ですよ!久々に劇場がどよめきましたね。その展開はないだろ!と。想像の斜め上の展開を行く映画というのは大好きなので、この展開には心躍りました。


以下少しネタを割りますが、
自分と同じ力を持ったものが親密になり近づいていくほど超人としての力は失われ、離れれば超人になっていく。これは実は冷戦とポスト冷戦の構造を戯画化したものなのではないかな、と思いました。つまりアメリカとソ連が緊張状態にあって距離をとっていた時代は両者ともに超人的な武力化をし、冷戦が終わるとデタントを迎え、お互いに核の放棄の方向に向かう、という状況を描いているとはいえないでしょうか。

監督のピーター・バーグは『プライド』『キングダム』そして『ハンコック』といずれもジャンルがバラバラの作品を作っているように見えて、実はアメリカの本質を描こうとしているのではないかと思いました。