最近の映画

7つの贈り物:★★☆
邦題でネタバレという最悪の状況。このタイトルでオープニングの5分見たら、7つの贈り物が何で、ウィル・スミスが何をやろうとしているか十中八九の人がわかっちゃうでしょ。少なくとも映画そのものはその意図を後半まで伏せてるんだから、こんなタイトル付けるソニーの宣伝部はバカ!(『ハンコック』『インクレディブル・ハルク』の素人吹き替えといい、最近のソニーはおかしいぞ!)ちなみに原題は 'Seven Pounds' 『7ポンド』。結末を見れば当然シェイクスピアのあの作品のもじりでしょう。
とはいえ映画自体ほめられた出来ではなかったりする。言うなればこれ、善意の説教強盗みたいな、「お前何様?」てな内容なのだ。テーマは贖罪なのだろうけど、贖罪する相手を間違っているし、その選び方も完全にウィル・スミスの「俺様ルール」なので非常に独善的で自己満足な結果に終わっています。


マンマ・ミーア!:★★☆
ミュージカル映画として致命的なほどダンスがつまらない。コレオグラファーしっかりしてくれよ。なので、ただ(対してうまくもない歌を)歌ってるだけの映画になってしまってる。いや、ダンスなくても『ドリーム・ガールズ』ぐらい歌と脚本がしっかりしてりゃ話は別だが。
メリル・ストリープのキャラクターは完全に躁鬱病の患者状態。三人の父親候補を見た時のシーンの後のハイアンドロウはつなぎがめちゃくちゃで人格完全に壊れてると思っちゃったよ。三人の父親の描き方も非常に浅く、時間が来たので結論に達しました、という感じで肩透かし。物語の団子がポンポンとおいてあるだけで流れがつながってない。婚約者と言い争いになった後、何事もなかったかのように式の準備するシーンなんか象徴的。
最後に、エンドロールは役者とビリング合わせるのがミュージカルのお決まりでしょ!基本がなってないです。


ベンジャミン・バトン 数奇な人生:★★★☆
日食や月食のように、重なり合う一瞬のために違う軌道を回った惑星がクロスする瞬間の美しさと悲しさを描いたラブストーリー。ところが映画的なフェティシズムが最も高揚するのは逆回転する時計と、その後の逆回しのシーンであるところがフィンチャーのビジュアリストたりうるところかも。逆回転する時計に誤った時間を巻き戻してなかったことにしたいという願いを込めるのは今も同じで、はからずも第一次大戦イラク戦争が重なるようにできてるのでは。
脚本がエリック・ロスなのでベンジャミンの時勢にアメリカ史が背景として溶け込んでいて『フォレスト・ガンプ』的な寓話ともとれるが、そうなるとベトナム戦争についての言及がなされてないのが解せない。
3つ驚いたこと。
1:音楽がハワード・ショアじゃない!「ショアは今回トーマス・ニューマンみたいな曲書くなぁ」と思ってたら最後のクレジットで「アレクサンドル・デスプラ」と出てきてひっくり返ったよ。
2:ティルダ様が出てる。ベンジャミンが惚れる女という役だけど、これ、明らかにケイト・ブランシェットに目鼻立ちが似てる所からの起用でしょう。2人にはどうもマゾ気質を刺激させられます。
3:ケイト・ブランシェットの幼少期を演じてる子がえらいかわいいなと思ったらエル・ファニング(ダコタんの妹ね)だった。血は争えん。


ディファイアンス:★★★☆
これ、『ホテル・ルワンダ』ですね。市井の人が行きがかり上、虐殺の運命にあった人たちを助けるコミュニティを作り上げていくっていうストーリーラインは。ただ、その市井の人がなにしろダニエル・クレイヴで、弟がリーヴ・シュライバー(二人とも米英を代表するスパイだ!)ときているので説得力がありすぎて、全面的に信頼できてしまうところが欠点といえば欠点。内輪もめの方付け方なんて見事!というか、007ならそうするよね、という手際の良さ。というわけで、役者のために映画のサスペンスが失われた気がしないでもありません。
人間としてのユダヤ人(自分勝手な奴もいるし、恨みに任せて人殺しもする)はちゃんと描けていて、単純に「かわいそうな人たち」で終わらなかったのはよいと思いました。
アカデミー賞にノミネートされたジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽ですが、ところどころ『ヴィレッジ』だったり『ダークナイト』だったりで、ノミネートされるほどか?という印象。