伊藤計劃氏死去

伊藤計劃:第弐位相を運営されていたSF作家の伊藤計劃氏が3月20日に亡くなられたそうである。氏の映画評論に常に感銘を受けていたものとして真に残念な限りである。
氏のサイトは現在のブログになる以前から拝見していたのだが、トニー・スコットの監視モニター萌えぶり、デストピア映画としての『リベリオン』と『マイノリティ・リポート』、『キングダム・オブ・ヘブン』におけるリドリーの「使用前使用後」仕事の素晴らしさ、『宇宙戦争』のキャッチボールシーンを通してみるスピルバーグの暴力描写、『ボーン・スプリマシー』のカーチェイスの組み立ての論理性、冷戦前から007の敵はアカではなかった論、そして『ダークナイト』のジョーカーの造形と、常に新鮮な映画の見方を教えていただいた。
氏が『ワールド・オブ・ライズ』のリドリー流監視衛星描写をどう見たのか、『慰めの報酬』をどう評価したのか、『ウォッチメン』とコミックの実写化の可能性をどう語ったか。これから何度氏のブログをクリックしても、もう二度とあの素晴らしい文章が更新されることはないのだと思うと、親しい友人をなくしたような喪失感を味わってしまう。病気の話が出るたびにギャグに落とすという前向きな姿勢には、私のような心の弱い者にはとうていかなわない、実に強い文章家であったんだな、と思わざるを得ない。
2、3度コメントをさせていただいて、丁寧にお返事をいただいたときは本当にうれしかったです。天国でヒース・レジャーとジョーカー論を戦わせて下さい。心からご冥福をお祈りします。そして長い間楽しませていただいてありがとうございました。