洋画3本ノック

邦画の話(『20世紀少年』『Ballad』『カムイ外伝』『しんぼる』のことだよ!)をすると精神衛生によろしくないのでもう少し棚上げ。

サブウェイ123/激突:★★★
人間歳をとると残りの人生、何ができるかを考えるもんだと思うんですな。例えばイーストウッドなんかは明らかに人生のまとめに入って映画製作をしていて、毎回「これで最後」ってことになってもいいぐらいの力を入れたクオリティの作品で、しかも「何故今この作品を撮らなければならないのか」という理由付けまで観客にさせます。
ところが今年65歳になるトニー・スコットはまだまだ死ぬ準備には早いと思っているご様子で、毎回変化球を投げてきます。でも今回の『サブウェイ123』に関しては相当なトニー・スコットファンである自分(『ドミノ』も『デジャヴ』もいい映画ですよ!)をもってしても、何故トニー・スコットが今撮らなきゃならんのか?とその動機探しに戸惑ってしまいました。
911後のニューヨークやイラク戦争後のアメリカ、リーマンショック後の金融市場と広げられる枝はいくつもあるのに、トニーの興味は2人の男に起こった偶然の顛末にしかないご様子。敵方であるトラボルタは絶対悪的な存在としてデンゼル・ワシントンの小市民と対峙しているようで、この構図はまるで『ダークナイト』におけるジョーカーとゴッサム市民のようだなと思ったものの、最後の動機でケチがつく。
映像のシグニチュアが明らかにトニー・スコットの作品であると物語っているものの、最近骨太な男のドラマ(『スパイゲーム』『マイ・ボディガード』)や物語性から映像の力に重心を置いた作品(『ドミノ』『デジャヴ』)を撮ってきた監督のものとは思えない「商品」でした。


ウルヴァリン:★★☆
『Xメン』シリーズは最初と最後が好きで、2作目はあまり感心しませんでした。これはひとえにプロフェッサーXと対立するマグニートヴィランとしての魅力に尽きると思うんです。『Xメン2』では本来のヴィランであるマグニートが人間を相手にするためにプロフェッサーX側と共闘してしまったために、ワンサイドゲームを見せられるようであまり面白くありませんでした(あと編集が下手>ジョン・オットマン!)。
で、今回の『ウルヴァリン』ですが、『Xメン2』の伏線をあわてて回収して撤収という感じでドタバタした雑な映画になってました。今回も倒すべきは人間であるストライカーなので、やっぱりヴィランとして魅力に欠けています。
いくつもの戦争を渡り歩いてきた歳をとらない永遠の戦士であるウルヴァリンモンタージュ的に描いたオープニングだけ秀逸。


正義のゆくえ:★★★
『クラッシュ』の後追いで賞狙いがミエミエのいかにもなミラマックス映画(ワインスタインカンパニーだけど)。
"Crossing Over"という原題からか交差する道の空撮がやたらと挿入されてわざとらしい。交差する道の数だけアメリカに不法滞在する人間のドラマは沢山あるということらしい。
愛国法のファシズム的恐怖は赤狩りの時代を連想させて非常に興味深いが、物語の主軸であるイラン移民を巡る殺人ミステリはあまりに動機が類型的で、同じ映画の中で水と油の状態が生じてる。それこそイスラム社会に対するステレオタイプを強調するような内容になってしまってる。
まぁ見られる映画だけど、どうみても『クラッシュ』しちゃってるよね。