しあわせの隠れ場所/プリンセスと魔法のキス/ハート・ロッカー

アカデミー賞絡みを3本立て続けに鑑賞

しあわせの隠れ場所:★★★
「実話の映画化」というのは実は非常に難しいものなのだな、と思い廻った作品。「ホームレス同然だった黒人少年の後見人なって、その少年がNFLの選手になる」という話自体は非常に感動的なのだけど、それは実話の面白さなのであって、映画が面白いのと勘違いしてしまう。映画の脚色自体は実は表層的で、それが端的に表れているのがサンドラ・ブロック扮する主人公の以下のセリフ
「私が彼を変えたんじゃないの、彼が私を変えたのよ」
ところがこの主人公、終始一貫して善人なのである。明らかに共和党支持者の保守系の人間で、黒人やホームレスの問題に全く興味がない人物というキャラクターとして前半描かれていればこのセリフも重みをもったんだろうけど、最初から(共和党支持者だけど)善人として設定されている人物がこんなこと言っても重みがないです。
selflessのな人間の話というシンプルさがselfishな強欲のためにおかしなことになったアメリカ人の心をとらえたのはよくわかるけど、主人公他者愛がどこから来たものかに踏み込めなかったような気がしないでもない。
近年のハリウッド映画では珍しく全米ライフル協会のメンバーが善人として描かれる作品として記憶されるべきかも。


プリンセスと魔法のキス(吹替):★★★
ニートのだらしない王子と自立した女性の話。だらしない王子というのは『ラマになった王様』で描かれているのでそこまで新味はないものの、自分の店を持つのが夢の独立した黒人女性が主役というのは保守的なディズニーにおいては新機軸かも。もはや古典的な白馬の王子を夢みる受動的ヒロインな物語はディズニーをもってしても作れないのね。
時代設定が気になるんだけどどう考えても公民権運動以前だよね。ニューオリンズって南部だしこんなに黒人の扱いが良いとは思えないのだけど。ドリームワークスとは違って政治的な話を持ち出さないのがディズニーらしさか。
エンディングに関しては『シュレック』の革新性には迫れなかった感じ。ランディ・ニューマンニューオリンズ出身)にミュージカルは荷が重かったか。


ハート・ロッカー:★★☆
いや、びっくりした。こんなに退屈な作品だとは。これは意図的なディレクションによるものなのだろうけど、爆弾処理や銃撃が日常風景になってしまっているので、登場人物と同じく感覚がマヒしてきて、何が起きてもスリリングに感じない。主人公が少なくとも最後までは生き残っているであろうことはわかるので、緊張感もない。しかも!話は恐ろしくフラグメンタルで主軸がない。兵士の日常を淡々と描いた作品なら『ジャーヘッド』の方が面白かったよ。政治性も娯楽性もない。なぜイラク戦争なのか?その意義が見出せなかった。同じようなことは他の戦争でも起きてるわけで、「今起こっている戦争だから」という理由以外にイラク戦争を選んだ理由はないような気がする。