インセプション/エアベンダー/プレデターズ

踊る大捜査線the Movie3」のひどさにライターズブロックという去年の「アマルフィ」と同じ状況。亀山Pの作品に何を期待してたのやら・・・。

インセプション:★★★★☆
見かけは夢と無意識の関係を描いた複雑な作品ではあるのだけど、実は「スパイ大作戦」の系譜に連なるプロフェッショナルものの雛形の作品なのであった。各分野のプロが集まって難攻不落のミッションを成し遂げるってまさにケイパーもののそれでしょう。さてはノーラン、007だけじゃなくって「ミッション:インポッシブル」の監督もやる気だな?
映画と夢というのは非常に似た要素を持つものです。両方とも暗闇の中で見るものだし、現実には起こらないことがしょっちゅう起こるし、真に理解しようとするには独自の解釈を必要とします。そして、その「解釈」はそれを見た人の意識を反映します。その点からいくと、この作品は「夢=映画」が「見る者=観客」の無意識に与える影響の可能性を描いた作品といえなくもありません。ノーランは「メメント」を映画の編集について映画、「プレステージ」を映画の展開について映画にしています。ある意味メタ的な人ですね。
ところで登場人物の中でエレン・ペイジが演じているアリアドネですが、これは各所で指摘されているとおりミノス島のアリアドネです。彼女が恋人に糸玉を渡して、その恋人はラビリントスの中のミノタオロスを倒したあと、糸をたどって無事に地上へ帰ることができます。ということはラストのトークンは・・・ということですね。
あとこのラビリントスを作ったのはイカロスとディーダラス親子です。ディーダラスはジョイスの「若き芸術家の肖像」の主人公であると同時に「ユリシーズ」のメインキャラクターの一人です。この二作はいずれも「意識の流れ」の手法を使って書かれています。登場人物の無意識すらも意識の流れのひとつとして文章化していく文学手法ですね。「インセプション」の主眼はキリアン・マーフィーのキャラクターの意識がどう変わっていくかを描いていくとこがプロットのひとつなので、ある意味「意識の流れ」映画といえるかもしれません。


エアベンダー(2D版字幕):★★★
シャマラン映画の大きなテーマとして「トラウマの克服」と「世界における自分の位置と運命の受け入れ」というものがあると思います。例えば「シックス・センス」は「元患者を自殺させた」というトラウマをもったブルース・ウィリスがいかにそのトラウマを克服し、最後に自分が本来属している世界を受け入れる、という構造になっています。「エアベンダー」はその点からいくと「ハプニング」よりもよっぽどシャマランらしい作品といえます。エアベンダーになるという運命を受け入れられず修行をほっぽり出して逃げ出してしまい、そのことで世界の秩序が乱してしまうというトラウマを持ったアンが、本来の自分の運命であるエアベンダーの地位を自ら受け入れる、という構造になっているからです。問題はこの雛形に収まらない部分(極端な例が水のベンダーの兄と北の水の王国の王女のロマンス)をすべてナレーションで済ませていること。よっぽど興味なかったのかな、シャマラン?なぜか東洋的なものやカンフーには興味があって、そちらには力が入っていて、シャマラン初のアクション演出はなかなかかっこよく仕上がってます。結果的に非常にいびつな映画に仕上がってしまいました。
とりあえず(批評的には散々だが)マネーメーキングディレクターであるギャランティは再度手に入れたことだし、次はまたオリジナルの無茶な企画をやって欲しいしだい。こっちの企画はデビット・イェーツあたりにまかせてしまえばよろし。


プレデターズ:★★☆
今まで戦っていたプレデタープレデターの中でも下等民族だったのだ!ってふざけるなー。「良くぞ戦い抜いた。この槍をやろう」の誇り高き戦士であるプレデターを観たかったんだよぉ(実は「プレデター2」の方が1より好き)。あとラストは投げっぱなしすぎ。そこから物語が始まるのでは?音楽は頭から尻尾までアラン・シルベストリ調のジョン・デプニーの見事なお仕事。