借り暮らしのアリエッティ/踊る大捜査線 the Movie 3

借り暮らしのアリエッティ:★★★☆
自分たちの身の回りにあるものを活用しそれ以上は求めない、足るを知る生活のアリエッティたちは自然の象徴であるのだと思う。実際アリエッティの部屋は植物でいっぱいだ。その自然の象徴たる小人たちの生活にいらん手を出さんでも、彼らはしぶとく生きて行くのである、というのが本作品の主眼であったかと。もっといえば、自然にはいたずらに手を出すべきではなく、主人公の少年のように「自分の手で守れるかと思った」というのは人間側からのおごりでしかないのだ、という宮崎駿らしい自然観なのではないだろうか。これは人間の手が加わった自然を本来の自然とは異質のものとして切り離して考えていた「もののけ姫」や自然と人間の対立を描いた「ナウシカ」の頃から首尾一貫したもので、自然と人間の完璧な共存などというのはあり得ないというリアリスティックなもの。
映像描写としては小人視点からの「借り」(狩り)のシーンが非常に楽しい。でも「こーわがらないでー」のシーンは不審者のそれだよな。
本作の欠点は小間使いのばあさんがなぜ小人を手に入れようとしたのか、その動機がまるで描かれていないこと。小人たちと観客にとっての意図が不明な恐怖の存在でしかない。


踊る大捜査線 the Movie 3 ヤツらを解放せよ:★★
「お前らちゃんと仕事しろ!」という話だった(捜査員に対しても制作者に対しても犯罪者に対しても。無差別テロする気なら拳銃全部盗め!)。
キネ旬の談話を読むと君塚良一はクランクインギリギリまで脚本に着手できなかったそうなのだけど、それは「何かを変えたければ偉くなれ」というTVシリーズにあったテーマが、「偉くなったって変えられないもんは変えられない」という結論に達してしまったことを君塚自身が一番知っているからだったのではないだろうか。偉くなった室井は組織を変えるための仕事も本来の補佐官としての仕事もせず、係長になった青島は「引越部長」という一応の肩書を与えられているものの、偉くなったなりの仕事はまるでしていない。かといって現場の仕事にどっぷりつかるには歳をとりすぎてしまっていて、完全にデッドロック状態。
映画版は一貫して君塚良一が理解できないものを悪役として描く作品だったのだけど、今回はまたしてもネトゲなんかにハマってる派遣社員はよくわからんという古臭い考えなのであった。時代の先端を走っていたはずの人たちがいつのまにか時代遅れになってしまった様を目の当たりにしてしまって悲しい。
毎度おなじみの過去の名作へのオマージュは、今回は黒澤の「野良犬」。拳銃を盗まれた刑事と犯罪者の対立。「のらいぬ」のハンドルネームから明らか。こういうオマージュという名のパクリはもうやめにしない?
ある人物の「死んじゃえばよかったのに」というセリフは「死ぬ死ぬサギ」を繰り返してきたこのシリーズを区切りよく終わらせたかった君塚良一の心の叫びなのかも。