ジャンパー

ジャンパー(Jumper) 
★★★
監督:ダグ・リーマン
出演:ヘイデン・クリステンセン, ジェイミー・ベル, サミュエル・L・ジャクソン
音楽:ジョン・パウエル

"There are always consequences!"(「何事にも結果があるんだよ!」)
パラディン”のサム・ジャクソンが“ジャンパー”のヘイデンに叫び襲い掛かる。何事にも報いはある。当然である。与えられた力を我欲のためにつかったジャンパーが狩られるのは当然かもしれない。物語の序盤、テレポートの能力に目覚めた後コンドミニアムに生活するようになったヘイデンが、洪水で救助が必要な人々を写すテレビを見て素通りしてしまう。彼は与えられた能力を自分のためにしか使わず、人助けには用いないのだ。中盤マーヴェルヒーローのタッグの話が出てくるが、彼はヒーローではない。だから“パラディン”側の言い分にも分があるように見える。「それは神だけが持つ力だ」神であれば助けを必要とする人のためにその力を使っただろう。この作品の主人公に感情移入できない理由を探るとすれば、この自分勝手さに原因があるのかもしれない。

映画見終わってしばらくするまでヘイデン・クリステンセンとサム・ジャクソンが『スターウォーズ/エピソードⅢ』以来の因縁の対決だということをさっぱり忘れていた(それぐらい自分がスターウォーズ者ではないということだが)。あとサム・ジャクソンが「マザファカ」言わないのが意外。
とまれ、今回の作品は追う者と追われる者の鬼ごっこをテレポーテーションを使って描いた作品である。見ている間中テレポーテーションの映像処理と編集のテンポのよさにほれぼれしてしまった。その一方で物語はわずか90分もない(クレジット削ると80分ぐらいか?)ので、飽きる暇もないというぐらいサクサク進む。
中世の時代から“ジャンパー”たちを狩ってきてきた“パラディン”との対決は少人数、非常にコンパクトで、正直スケールが小さい。主人公のキャラクターも「母親に5歳のときに捨てられた」「父親と上手くいっていない」という背景があるのに、そのあたりを尺を優先してテキパキ処理してしまうのであまり魅力的ではない。これなら“パラディン”との対決に復讐心から燃えるジェイミー・ベルのキャラクターのほうがずっと魅力的だ。

とはいえ、2008年のそれなりにお金のかかった大作がわずか90分というのはちょいとした珍事で、尺が長くなりがちな最近のハリウッド娯楽映画に風穴を開けている点は評価したいと思う。少なくともテレポーテーション描写は楽しく見られたわけだし。