ライラの冒険 黄金の羅針盤

ライラの冒険 黄金の羅針盤(The Golden Compass)
★★☆

監督:クリス・ワイツ
出演:ダコタ・ブルー・リチャーズ, ニコール・キッドマン, ダニエル・クレイグ, サム・エリオット, エヴァ・グリーン
音楽:アレクソンドル・デプラ

原作は未読。3部作であることは承知の上で鑑賞したのだが、『ナルニア国物語』のように各章が結末に一つの区切りをそれぞれに持っているかと思っていたので「俺たちの戦いはこれからだ!第1部完」といった具合の打ち切り漫画みたいな終わりかたを見せられてひっくり返ってしまった。いや、確かに『ロード・オブ・ザ・リング』だって3部作だけど、あちらは各部毎にテーマがあって、そのテーマにみあった結末を用意していたから今回の『ライラの冒険』のような尻切れトンボ感はなかったのだ。
原作は文庫本サイズで2冊あるそうである。それがエンドクレジット含めて120分なのだから、展開が駆け足になるのも当然だ。仲間が増えていく経緯のグダグダっぷりや、終盤の魔女の突然の援軍、ダニエル・クレイグの拉致後の処理など、説明不足があまりに多い。おまけにこの作品独特の専門用語がズラズラと出てくるので前半は正直、混乱しながら物語を追いかけるのに必死で楽しむ暇がない。
そもそも監督のクリス・ワイツは『アンツ』の脚本や『アバウト・ア・ボーイ』のように英国的なウィットに富んだコメディや社会風刺的なギャグを得意とする人であり、幾らファンだからといっても畑違いのファンタジーに足を突っ込んだのがそもそもの間違いだろう(大体ワイツ自身が最初この仕事は自分向きじゃないと企画を断ってる)。
オープニングで映画の世界の説明がナレーションで一気に畳み掛けるようになされるが、ここでもう置いてきぼりである。おまけにキーワードとなる「ダスト」やダニエル・クレイグがしようとしていること、明らかにカトリック教会ガモデルのオーソリティの目的など、物語のキーとなる要素が全て謎のまま映画は幕を閉じてしまうので消化不良はなはだしい。

制作のニューラインがワーナーに吸収され、アメリカでのこの作品の興行が華々しくなかったこと(わずか7000万ドル)からおそらく第2部、第3部が作られることはないだろう。そうなるとますます「俺たちの戦いはこれからだ!第1部完」の感が強まってむなしく思えてしまうのだ。