魔法にかけられて

魔法にかけられて(Enchanted)
★★★
監督:ケビン・リマ
出演:エイミー・アダムス, パトリック・デンプシー, スーザン・サランドン, ティモシー・スポール

ディズニーアニメのお約束的世界のキャラクターが現代のニューヨークにやってくるドタバタコメディと聞いて抱いた期待ほどには笑えない中途半端な作品。
オープニングの2Dアニメで「運命のプリンスを“待つ”だけのヒロイン」「動物たちは人間の言葉がわかりなんでもしてくれる」「歌で何でも物事が進んでいく」「勇ましい王子」というわかりやすいアイコンが並べられていく。これが実写の世界に移動したときにはアニメのときのようにうまくはいかないというギャップがこの映画の面白さになるはずなのだが・・・。

実写パートに移ってからもアニメパートのお約束事、例えばヒロインの歌声に乗せて動物たちが部屋を掃除したり、セントラルパークのミュージカルパートなどはそのままアニメの世界と同様になりたっている。実際はこういうことが成り立たないところにギャップが生まれて面白いのだと思うのだが。その一方でアニメパートではおしゃべりだったリスが現実社会ではしゃべれなくなっている。このチグハグな設定。あるいは実写世界に移動した王子と召使(アニメパートのまんまの顔のティモシー・スポール)だが、特に召使が完全に現実世界になじんでしまっていて、どうやってホテルの金を用意したのかとか、そもそもホテルの概念をどこで知ったのかとか、ギャップコメディとしていたるところで中途半端。

さらに毒林檎を食べて永遠の眠りについたプリンセスを目覚めさせるのは愛する人のキスという思いっきりベタな展開でクライマックスを迎えて、悪人は主人公が直接的に手を下すことなく勝手に高いところから落ちて死亡というディズニーのお約束がそのまんま踏襲されていて非常に保守的。

「運命の人を待って出会ったらすぐ結婚」という単純な思考のヒロインが現実社会と触れ合って相手を深く知ることの重要性を学ぶという展開は非常に良いと思うのですが、それ以外の部分がとにかく中途半端に過ぎて、正直ドリームワークスだったら「ディズニー的ファンタジーのお約束事」を滅茶苦茶にぶち壊すひたすらシニカルで爆笑できる作品ができたろうになぁと消化不良な気分になりました。