Sweet Rain 死神の精度

Sweet Rain 死神の精度
★★★
監督:筧昌也
出演:金城武, 小西真奈美, 富司純子, 光石研

死神の話である。対象となった人物を生かすか死なすか(「見送る」と表現されている)、それを判断するために対象と数日付き合って判断する。この単純なプロットが三部構成で物語られており、3つめの話で全体がきれいに一本の線としてなる、という理想的な映画作りはされていると思った。のだが、監督の意図的な演出なのか、それとも無能さゆえなのか、第一部にあたる物語に違和感を持った。ミュージックを愛する死神はCDショップ(←ここが既に問題。レコードショップじゃないのだ)で対象を観察するのだが、手にしているCDがマキシではなく、旧型のシングル版なのだ。そして対象となる人物(小西真奈美)が音楽を聴くツールがカセット式のウォークマンなのである。つまり第一部は現代が舞台ではないのだ。ところが舞台背景や人物が着ている服、町の風景は現在(そもそも死神が視聴している機械は現代のCDショップで見かけるCD用の試聴機という点も問題)なので、(観客である自分のカンの鈍さもあるが)、これが意図的に現代を舞台に旧型のツールを出しているのだと勘違いしてしまった。第二部でアイポッドが出てきて、第三部でアンドロイド(!)が登場した時点で、この物語は死神は年齢をとらないけれど、現世の時間はものすごい速さで流れていっているのだということを描いていることがわかるのだけど、時代背景を演出するセンスが欠けていると思ってしまった(特に第三部はアンドロイドが登場する必然性がそもそも「現在ではない」ということを示す以外に何もない)。第二部のヤクザものの描写も類型的過ぎて突出したところがなく、正直退屈に感じてしまった。富司純子の登場する第三部で「あぁなるほど」とパズルが解ける快感はあるのだが、ここにいたるまでの欠点が目に付く作品になってしまった。もうすこし細かいディティールまで目のいく監督が撮っていれば面白くなったのではないかと晴れやかな空の下で考えるのでした。

でも最初に思ったのは「あ、『ゴジラガイガン』だ!」というところがオタクたる所以か(ヒント:犬との会話)。