うちの妻ってどうでしょう?(1)

うちの妻ってどうでしょう?(1)
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福満しげゆき

僕の小規模な失敗』を機に小ブレイクして、去年末から『僕の小規模な生活』『生活』と立て続けに新刊が出ている福満しげゆきの新刊です。この人の作品は基本的に私生活の切り売りなのですが、その私生活に満ちている世の中に対する恨みがましいような、ひがみのような視点が共感できて好きで、全巻購読させてもらってます。

今回の作品は『僕の小規模な生活』と対をなす作品で、本人よりもふくよかに描写される奥さんのことを中心に私生活と作者の考えを切り売りしています。

毎回考えさせられるところありの福満作品ですが、今回特にピンポイントでワタクシのハートを打ち抜くところがあったのでちょっと紹介させてもらいます。

バンドの人 お笑いの人 スポーツ選手
活躍してる人の年齢をいつも気にしていて
自分より年上なら
「ホッ」
...として
年下ならショックを受けてガッカリと落ち込みます

わかるなー。文字通り痛いほどわかります。この後に同い年だとさらにくやしくて落ちこむと続くのですが、今の自分がまさにそんな状態です。こないだ見た『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のポール・トーマス・アンダーソンは27歳で『ブギーナイツ』を発表してるんですよ!なんでしょうね、この差は!自分は福満サンみたいに「コネがあるに違いない」と外因的なところにその人の活躍の理由を求めずに、単純に努力と才能の差とあきらめてジタバタするタイプです。で、その後であせります。

もうひとつ、ハートを打ち抜かれたネームを紹介。

何か...なんと言うか
バックボーンになるような...そーいったものが僕にはない
そーいったものが僕は欲しかったのです

これもジタバタするほどよくわかります。なにしろ大学院入った理由のひとつがこれなので(笑)。うちの父親というのが尋常じゃないほどバックボーンがある人なんですね(東大卒のエリート官僚デス。人間としては軸がぶれてる人だと思うんですが)。コレに対して自分はバックボーンといえるような、人に誇れるものが全然なくて、学歴もダメダメだし知識もない。非常に大きなコンプレックスを持ってたわけです。

で、父親を超えるバックボーンを持ってやろうと一念発起して浪人して大学院に入って教授になろうとがんばったわけですが、その器ではなかったと。自分の父親を超えられないというのは苦しいもんですよ。

福満作品に満ち満ちてるひがみ、ねたみ、そねみ、それらは全部自分に通じるもので赤の他人とは思えないわけです。しかしこの人が自分と決定的に違うのは、作者の鬱々とした感情を表現する漫画という手段を持っているという点です。これがあるだけでもこの人は幸せなんじゃないだろうかと思ってしまいます。