紀元前1万年

紀元前1万年(10,000 B.C.)
★★★
監督&脚本:ローランド・エメリッヒ
音楽&脚本:ハロルド・クローサー

エメやんの最新作。『ラブやん』じゃないよ。エメやん。「ローランド・エメリッヒ監督の最新作」というよりもこっちの方がシックリくるのは何故だろうか?多分この監督の作ってきた映画の底抜けのバカさ加減に嫌悪の情ではなくて愛着がもてるからだろう。
エメやんの映画はまず映像ありきである。「チョーヤベー映像がオレ今回も作りたくってさ。マンモスが人間に絡まれて大暴れしてるシーンなんてチョーやばくね?あとピラミッド。『スターゲイト』でもやったけどさ、今回は奴隷の数もっと増やしてさ、でもってマンモスが石ひっぱってんの。チョーヤベーって感じするじゃん。え?いつの時代だって?紀元前1万年ぐらいなら皆知らないだろうしいいんじゃないの?それよかサーベルタイガーがさ(以下略)」

あー、頭が悪い。でもエメやんの新作はやっぱり撮りたい映像がまずありきで、物語はその映像と映像をつなぐための糸でしかありません。だから映像は「チョーヤベー」のですが、お話は非常にありきたりで言っては何ですが誰でも考えつくような話です。いや、「マンモス狩りしてる部族の長選び」とか「サーベルタイガーと話す人間が部族を導く勇者となる」ってのが誰でも考えつく話といってる訳ではないです。「愛するもののために旅をする」これこそオデュッセイアの時代から誰もが考えてきた話です。というかぶっちゃけ『アポカリプト』っすね、PG−13版の。
というわけで映像ありきの物語を重視しないタイプの監督の作品なので、見終わった後何にも心には残らないでただ「マンモスすごかったなぁ」「ピラミッドの奴隷蜂起のシーン迫力あったなぁ」といった淀長調の感想しか思いつかないのですが、映画というのはそもそも見世物であるので、それでいいと思うわけです。

ただ問題なのはエメやんの最高傑作(笑)である『インディペンデンス・デイ』や出世作の『スターゲイト』の時と同じく、白人種(何しろ時代も場所も特定できない映画なのでとりあえずコーカサイドとしておくが)こそが、虐げられた民を救う、指導者たる人種なのだ、という思想が根底にあること。囚われの身となっていた人種が有色人種が多いところからもあからさまですが、そういう白人優位主義的なところがいかがなものかなぁとひっかかる作品でした。

しかし本作品は企画が通ったこともかなりミステアスですが(よぽどエメやんの口がうまいのだろう)、脚本と製作を音楽担当のハロルド・クローサーが担当していることがさらにミステリアスですね。編集と音楽を両立する人はジョン・オットマンという例がありますが。あ、そういえばオットマンは監督も一度やってますね『ルール2』という作品ですけど。