ランボー 最後の戦場

ランボー 最後の戦場(John Rambo)
★★★☆
監督&脚本&主演:シルベスター・スタローン
共同脚本:アート・モンテラステリ(*) 

You know what you are.
What are you made of?
War is in your blood?

ランボーマチェーテを鍛えているシーンでかかるモノローグです。これがスタローンの映画制作への姿勢と思えてなりません。思い返せば『ロッキー・ザ・ファイナル』はスタローンの映画人としての復活、セカンドチャンスへの希望をロッキーというキャラクターを通して昇華させた傑作でした。今回の作品は、『ロッキー〜』と同じく、アクションスターとしてのスタローンの復活の願いを映画にこめて作られた作品だと思います。

「お前は自分が何者か知っている。
何がお前を作っている?
戦争がお前の血に流れているのか」

これ、「戦争」の部分を「アクション映画」と置き換えると現在のスタローン自身にだぶるのですよね。「アクション映画のスターとしての血がお前には流れている」とスタローンは自覚していて、この作品の製作に望んだのではないでしょうか。さしずめ「ボートを出して」と頼むキリスト教団体はスタローンにアクション俳優としての復帰を求めるファンたちでしょうか。

そのためかこの作品、ランボーというキャラクターに今までの作品のように「アメリカ」が背負わされていません。ベトナム戦争の後遺症に悩むアメリカを体現した1作目、ベトナムの負け戦を映画で復讐し、強いアメリカの理想を体現した2作目、レーガンが掲げる強いアメリカを一人で演じソ連に報いた3作目。このシリーズは常に「アメリカ」を背負ってきたわけですが、今回はそのカラーがありません。その代わりにあるのは戦場で戦うことで自分の闘志を取り戻していくランボーの姿です。これがアクション映画というフィールドで映画人としての力強さを取り戻していくスタローン自身に見えてきます。

自分のアイデンティティーは自分で取り戻す、自分で監督することによって。ここにスタローンの強さを感じずにはいられません。
ウルトアゴアな作品で、敵がミャンマーである必然性など特にないのですが、スタローンが再びランボーとなりアクションスターのアイデンティティーを取り戻していき、母国に帰るラストシーンは、スタローンの映画人生の回帰を思わせて、映画の出来とは関係なく感動してしまいました。

政治性がない。残酷なだけ。いろいろ非難はあるでしょうが、スタローンの映画人としての器用さにはやはり頭を下げるべきではないでしょうか。今作品のように『プライベート・ライアン』調のリアリズムミリタリーアクションも撮れれば、『ロッキー・ザ・ファイナル』のような70年代のにおいのする良い意味で枯れた作品も撮れる。一方同じ作品内でトニー・スコットもかくやという編集センスもみせ、もちろん『ロッキー4』のように80年代のMTV風な作りも器用にこなす。『アンツ』以降スタローンは2番手でいることを良しとするスタンスを覚え、『ドリヴン』でそれは活かされています。そして『ロッキー・ザ・ファイナル』でセカンドチャンスを声高に叫び、今回の『ランボー 最後の戦場』でアクションスターとしての回帰をしています。こんなにアクティブな60代はそうそういません。それだけでもスタローンは偉大だな、と思ってしまうのです。

ということでスタローンの映画制作姿勢を私は断固支持するもので次回作も心から期待しています。

(*6/1追記:脚本はスタローン単独ではなく共同脚本でアート・モンテラステリがクレジットされていたことに気づく。この人『ハンテッド』の脚本家なのだが、『ハンテッド』は現代版『ランボー』的話なので、非常に的を射た人選だったかと)