ザ・マジックアワー

ザ・マジックアワー
★★★
監督と脚本:三谷幸喜
出演:佐藤浩市, 妻夫木聡, 深津絵里, 綾瀬はるか, 西田敏行, 小日向文世, 寺島進, 戸田恵子, 伊吹吾郎

デビュー作の『ラヂオの時間』を越える作品を未だに撮れない三谷幸喜ですが、今回もやはり『The 有頂天ホテル』のように散漫な作品になってしまいました。
ラヂオの時間』は密室劇として凝縮した面白さがあったことを考えると(もちろん原作がそもそも密室劇であるわけですが)、この人には映画のような広い舞台を扱った作品が本質的に向いてないのではないでしょうか?例えば、密室劇として傑作だった『笑の大学』が、映画として広い舞台を持ったとたんつまらなくなってしまったことからも、この人の脚本は密室劇にこそ面白さの本質があるのだと思います(もっとも『笑の大学』は監督が違いますが)。
そもそも名が知られてはいないとは言え、映画の世界にどっぷりつかっている佐藤浩市のキャラが、妻夫木聡扮するニセ監督の話に少しでもだまされるところに無理があります。カメラや脚本など小手先のごまかしでその場をやり過ごしているように見えますが、映画をたくさん見ている人間であれば、それだけでは嘘を貫き通すことができるはずがないとわかってしまいます。そういうことを考えると、この作品は普段あまり映画を見ない人向けに作られた作品なのだなぁと思いました。
それから深津絵里には男をたらしこむ悪女の魅力がなく、この点も物語の足を引っ張ります。男が命をかけてまで彼女に惚れ込む説得力がありません。
声を出して笑えたのが稲川素子事務所絡みのギャグのみというのがなんとも残念です。
ところで市川崑が撮ってた映画は『黒い何人の女』なんでしょうか?エンドクレジットでは少し泣きそうになりました(市川崑が好きなので)。