今年最後の映画たち

ワールド・オブ・ライズ:★★★
視線についての映画。上からの映像は状況を客観視できるかもしれないけど、テロとの戦いと言う現在進行形の状況においては、現場から離れた俯瞰は役にたたず、直近の主観しか頼りにならない。『パトレイバー2』の後藤の「戦場においては・・・」の台詞を思い出させる一本。
でも作品としては『アメリカン・ギャングスター』に続いてマーク・ストラインフェルドのダウナー系の音楽と相まってイマイチ盛り上がりに欠ける映画で、やはりリドリーにはジマーが一番シックリ来るなと認識させられました。

私は貝になりたい(2008年版):★★★
燃え上がる大都市。巣鴨プリズンの廃墟。プリズンの概観。そして撮影。全てが一流。脚本も希望とその希望をいともたやすく消してしまう理不尽を描き、東京裁判のアンフェアな部分、犠牲になる一般市民の不幸をしっかり描いている。でも主役が何やっても「中居クン」なのだ。今にもバラエティ的ギャグをやりそうで、この役柄を受け止める技量に決定的にかけている(武田鉄也出てきたときは二人でどん兵衛のCMでもやる気か!と思ったぞ)。そのかどで全ての罪で有罪!あと久石譲は今回も鳴らしすぎ。「死刑を執行します」ジャーン♪ってバラエティじゃないんだからさ。尺も予定調和の物語に対して長すぎた。

K-20 怪人二十面相・伝:★★★☆
こんなに安心して身を委ねられる邦画大作っていつ以来だろう?金城武の日本語がつたないのはもちろん植民地たる中国から渡ってきたからなんだろ、第二次大戦が回避されたと言うことは?
本当に良く出来た痛快娯楽大作。きしくもダークナイトと同じようなオチを持った『怪人二十面相・ビギンズ』になってる。アクションにごまかしはなく、ノスタルジーを喚起するような風景も、あくまで物語のために必要な風景として自然に存在している。そして「昔」は美しいものなどではなく、汚い面を持ったものなのだ、と架空の日本であってもしっかり描いている。視線は前向きで、格差などある社会など変えていこう!と現在に通じるテーマを持っている。そのダークヒーローとしての二十面相の誕生を描いた本当に楽しい映画だった。

地球が静止する日:★★★
やたらとクラトゥにつっかかるなまいきなガキだなぁとおもって見てたらエンドクレジット見てビックリ。ウィル・スミスの息子でしたか。そりゃあ親がMIBだもんな。宇宙人なんかやっつけろと好戦的にもなるか。
そのやたら好戦的な息子がその考えを改めるのは、クラトゥに何気なしに助けられたから。その行動は相手がどんな人物であるかを雄弁に物語る。人間は知らないものを恐れ、その恐怖から攻撃に転じてしまう。今世界で起きていることはその総和なんだと思う。そして地球は「我々のもの」という傲慢。この二つが地球を危機に導いているのだと映画は語っているのではないかな。総じて志は高い映画だと思いましたが、最後のあっけなさになんか肩透かしを食らったような気が。
バカ歩き省ことジョン・クリーズノーベル賞ってのはなんかの悪い冗談か?

次回は今年のベスト10を選ぼうかと思います。