オスカー2本

スラムドッグ$ミリオネア:★★★☆
映画の冒頭で主人公のジャマールが「何故クイズに全問正解できたか」という問いがだされるが、エンディングで導かれる答えに従えば非常に運命論的な内容の映画。決して貧乏なインド人のサクセスストーリーではない。むしろ、成功することを約束された人間が、その道のりを振り返る内容だったかと。もうひとつ、非常に純粋な愛の映画でもある。ジャマールとラティカの愛もまた運命論によってあらかじめ決められていたものなのだろう。
ダニー・ボイルの作品は破滅に向かって「走る」映画が多いと思うのだが、今回は同じ「走る」でもポジティブなものだったので見ていて気持ち良いものがあった(てことは『トレインスポッティング』は嫌いだということだね)。
アメリカンドリーム的な物語をイギリス人の監督がヒンドゥー語を多用してしかもラストは歌にダンスというとても今日的にグローバルな映画だったかと。


ミルク:★★★☆
この映画が感動的なのは、ミルクの活動がゲイという一つの独立したマイノリティグループを守るためのものではなく、すべてのマイノリティ(劇中では「アジア人も含む」と言ってたのが印象的)の権利を守るためのものであったということが、最後のテープで明らかになるから。でもそうなると映画が割り当てている尺がゲイの運動に比重を置きすぎているかな、とは思うが。ダン・ホワイトの追い詰められ具合がしっかり描けていないので、彼の凶行が突飛に見える(まぁじっさい突飛な事件ではあるんだが)。ヘイトクライムではなく、政治的なやり取りの失敗で命を失うというのが意外性があって興味深い。