オスカー監督作品2本

バーン・アフター・リーディング:★★★☆
ノーカントリー』は乗れませんでしたが、今回はOKです!やっぱり『ファーゴ』みたいにとんでもない惨事が何気なくとられたトボけた感じの映画の方がコーエン兄弟は面白い。明るい惨劇とでもいいましょうか。ジョージ・クルーニーパラノイアぶりはアメリカのイラクでのテロへのパラノイアの風刺かな?登場人物への適当な距離感がよいです。気持ち良く突き放して「バッカでー」とゲラゲラ笑ってんの。大好きなシーンは「その」直前のブラット・ピットの顔とオノでザクザク。やっぱり明るい惨劇だ。「我々はこの件から何を学べた?」「何も」万事がこの調子がアメリカンウェイというのがこの作品のテーマなのかも。

グラン・トリノ:★★★★☆
オールドスクールアメリカ「白人」が異文化の若者に「アメリカの大人」になるイニシエーションを施す映画。『シンプソンズ』を見ると芝刈りや家の修繕が家の主人の仕事というのがよくわかりますが(それがちゃんとできないんでホーマーはダメな父親なのである)、このアメリカ白人の男の仕事を主人公のコワルスキーはハン族の青年に叩き込んでいきます。あるいは人種差別ジョーク。人種差別のジョークをコワルスキーとその仲間たちは当たり前のように会話にはさんでいきます(「イタ公」「ポーランド野郎」)が、これは彼らが移民としてアメリカに入ってきた者同士、アイデンティティーを認め合ったうえでの差別用語なのだと思う。だから若者たちが使う「ホニー」や「ブロー」みたいな排他的な差別用語をコワルスキーは受け付けないんでしょう。この差別的ジョークも叩き込んでいきます。
「古き良きアメリカ」の文化がアメリカ人ではなく、完全な異文化の国からやってきた青年に引き継がれていって、アメリカというものはこれからも文化が継承されていくというのがグラン・トリノの遺産相続が含むメタファーでしょう。
チェンジリング』のような強烈なパンチ力はなく、むしろ淡々とした作品ではあるものの傑作。現在78歳のイーストウッド。あと何本見られるんだろう?