8月はがっかりの国

8月に見た新作映画は『サマーウォーズ』と『96時間』以外は期待はずれの作品ばかり。


G.I.ジョー:★★☆
ビックリするぐらい中身のない映画。あえてメッセージ性を探そうとすれば「さぁ!家に帰ってG.I.ジョーのフィギュアを両親にねだるんだ」という商人気質でしょうか。同じ中身がない『トランスフォーマー』に比べても、「こだわり」が欠如していて、とにかく見せ場だけドッカンバッカン詰め込んだ、いかにもスティーブン・ソマーズらしい緩急を欠いた作品。ハイテクも行き過ぎるとミステリーが生まれなくなることを見事に証明しています。『ザ・グリード』の頃は期待できる新人がでてきたと思っていたのに・・・。こんな映画に1億7千万ドルかかってるというのはコストパフォーマンス悪すぎでしょう。見せ場だらけなのに平坦な印象って、もしかしてスティーブン・ソマーズは第二のレニー・ハーリンなのか?


ココ・シャネル:★★☆
B級映画の星ことクリスチャン・デュケイの映画が日比谷シャンテのしかもスクリーン1でかかることなんておそらく後にも先にもこれっきりなので期待してシャンテに行ってガッカリ。
アメリカではTV映画として作られた作品なので、TVで見る分には不満は感じないものの、劇場でかけるには予算が足りなかった感じ(前半のパトロンの別荘での予算のやりくりにそれが見てとれる。セットにお金かけられないから外観と相反して中が狭苦しい)。シャーリー・マクレーンの存在感があまりにありすぎて、彼女の若い頃を演じている女優は完全に空気になってしまった。年老いたシャネルがデザイナーとしての才を見せるわずかなシーン(姪の服装をバサバサ変えていくところ)は、マクレーンの演技も相まって見事に「映画」であるのに。
結局彼女が流行の表舞台から去ってから再デビューをはたす空白の15年間に何があったのかは劇中明かされないのだけど、帰ってからネットで調べたらナチがらみの話が出てきて、こっちの方がよっぽど映画的刺激に満ちているんじゃないかと思った次第(しかもデュケイ向き)。


サンシャイン・クリーニング:★★☆
なんとも無責任な話。話の起点である「お金」という現実的な問題を放り出して、家族が和解してなんとなく上手くまとまってめでたしめでたしと話を畳んだように見えるけど、根本的な原因は何も解決されてないぞ!


ハリー・ポッターと謎のプリンス:★★☆
前作もそうだったけど、監督のデヴィット・イエーツは本質的に人の死をドラマティックに演出できない人なのだな、と思った次第。本来今回の作品は優秀な魔法使いの弟子だったドラコが暗黒面に落ちるという大きなテーマがあるはずなのに、そこが全く描かれておらず、ハリー側のどうでもいいちちくりあい話に時間を費やしているので作品の核が固まらないままに終わってしまった。いつ面白くなるかと思ってたら最後まで面白くならなくて、間違いなくシリーズ最低作。


劇場版仮面ライダーディケイド/オールライダー対大ショッカー:★★☆
これって明らかにオールドファンの動員を見込んで作られている企画のはずなのに、ディケイドの世界が全く説明されていないのは商品として欠陥でしょう。主人公がそもそも何者なのかわからないから中盤の意外な展開の意外性が理解できない。何より全部のライダーを倒したのに最後に勢ぞろいする理由付けが全くされてないところに腹が立つ。そーいうところでちゃんとした嘘をつけるかつけないかで作品の厚みって違ってくるのよ。あとなんで石橋蓮司死神博士になっちゃたの?Gacktライダーマンは全ライダーにカウントされないの?くだらない駄洒落考える前に脚本を整理してくれ。あと仮面ライダーブラックとRXは同一人物なんだから同じシーンにいちゃダメでしょ。


侍戦隊シンケンジャー 銀幕版 天下分け目の戦:★★☆
いきなりクライマックスだぜ!ってそれ番組が違いますがな。と思ったら脚本が小林靖子だった。現実社会を見せておいて国取り合戦的にヒーローと悪者が戦ってるってのは無理があるかと。それから無い知恵を振り絞ってヒーローたちが潜り込んだ敵陣に、子供たちがやすやすと入り込めちゃうっていう矛盾に誰も疑問を持たなかったのか?戦隊モノのテンプレートに乗っかっただけの話でもツメが甘いのでイマイチに見えてしまう。


グッド・バッド・ウィアード:★★
配給権があまりに高くて買い手が付かなくて公開が先延ばしになってたというのはあくまで建前で、実際のところは単純に出来が悪いから誰も見向きもしなかったのではなかろうか?「ムチャクチャデイイノダ」とは言うけれど、ここまで未整理な脚本じゃついていけません。全てが西部劇のイメージ先行で実体が伴っていない。「過去に因縁がありそう」とか「いかにも悪者そう」とか「ちょっと変わってる」というそういった「なんとなく」だけのキャラクターで話を作っているので、各キャラクターがじゃあ実際にどんな人物なのかと言われたとき実態を話すことが出来ない。ラストの三すくみのガンファイトも必然性があってのものではなく、お約束だからシーンを用意した、としか見えない。岡本喜八の『独立愚連隊』シリーズや『戦国野郎』みたいに、西部劇を消化した上での「西部劇」風作品を作った、というものを期待したので『スキヤキウェスタン・ジャンゴ』級のガッカリ。