年末の映画

私生活がドタバタしてたんで相変わらず星とりばかりですが、少しずつ近日中に前の状況に戻します。

母なる証明:★★★☆
母の愛の業の深さを描いていると評判ですが、何しろお国が韓国なので結局「ファビョーン」で「ケンチャナヨ!」な展開だったな、という印象。ラスト一歩手前なんて文字通り「火病」。例えばこれが他の国の映画だと印象は随分違ったんでしょうが。
ポン・ジュノは完全にドロップキックがシグニチャになっちゃったね。


カールじいさんの空飛ぶ家(3D吹替):★★★
実はこの作品登場するもう一人の老人の造型が、『トイストーリー2』のプロスペクター爺さんとほぼ一緒なんだけど、ピクサーは「昔のことにこだわってるより、新しい一歩を踏み出しましょうよ」という非常にポジティブなメッセージを発する一方で、「昔のことにこだわる人間ってうっとうしい」という負のメッセージも発しているように感じるのですよね。この辺の完全に両極端な描き方が、自分には相いれないわけです。ドリームワークスはむしろこの落ちこぼれたちをすくい上げる仕事をしているような気がします。
あと宮崎駿はオープニングだけで満足してしまったと言っていたけど、確かにオープニングはすばらしかった。でもこれ、逆説的にオープニングを超える感動はついぞ得られなかったってことでもあるわけで。平凡な夫婦の愛情の物語が空飛ぶ家の冒険活劇より心打つというのは作劇計算外だったのではないかな、と。
あと、これ、ビスタサイズだったのが非常に期待外れ。スクリーンサイズが3Dメガネの視野より狭いと、立体感が急になくなるような気がします。
吹替え版のカール爺さんは飯塚昭三。「おそーじおばさーん!」と思わず叫ばせたくなる。


パブリック・エネミーズ:★★★
今年の冬一番期待していた作品だったのだけど、どーしちゃったの、マン?ディオン・ヴィーヴはHDカムをわりに使いこなして『コラテラル』で闇のLAを美しく撮ってたと思うけど、ダンテ・スピノッティは明らかにHDカムの特性に慣れてない感じでとにかく映像が汚い。マンは映像の汚さ=リアリズムと考えているみたいだけど、やっぱり世の中には作品に適した質感というものがあると思うわけです。そしてこの映画はフィルムで撮るべきだった。
映画はあくまでデリンジャーの話なのだけど、じゃあなんで彼がそこまで世の中から支持されたのか?というバックグラウンドを描くまでの時間が足りなかった。あと彼とコインの裏表になるべきパージェスの描き方が浅すぎた。この作品はエリオット・ゴールデンサル、ダンテ・スピノッティと『ヒート』のメンツを再結集して、今の世代のデ・ニーロとパチーノたるクリスチャン・ベイルジョニー・デップを集めてるんだから、新世代の『ヒート』を作るつもりだったのに、それが果たせなかった感じ。それもこれも捜査する側のドラマが空虚になってしまったのが原因。
ラストでおいしいところを持っていくスティーヴン・ラングは今後の注目株(『アバター』で大暴れ!)。この映画で最もマンのスピリッツを体現してたかも。


アバター(3D字幕):★★★☆
ポカホンタス』で『ダンス・ウィズ・ウルブス』で『ラスト・サムライ』なSF映画。地球人によるパンドラの侵略がフロンティア開拓によるインディアンの掃討のメタファーなのは原住民のナヴィのリーダーがウェス・スチューディなところからも明らか(注:わかんない人は『ラスト・オブ・モヒカン』の父親とか『ヒート』のアル・パチーノの部下のインディアンといえばわかるか?)。
予告から予想できる以上の展開がまるでなく、新しい映像のための使い古された物語の使用というのは『タイタニック』の頃から変わらず。
ミッシェル・ロドリゲスの男気姉ちゃん(=バスケス)は『エイリアン2』のころからの趣味と変わらず。パワーローダーもでるし。もっともこの姉ちゃんの行動動機がちゃんと描けないところにキャメロンの演出力の衰弱かを感じずにはいられないかも。
3Dでここまでできるよ、という意味ではマイルストーンになる映画だけど、2Dで見ると何の意味もないところに3D映画の今後の課題があると思う。
個人的ツボはラストの大戦争ジェームズ・ホーナーが『エイリアン2』のオカズを使ってならしちゃってるところ。なんだかんだいってこの2人は罵倒しながら仲がいいんじゃないか?


ウルトラ銀河伝説:★★☆
『ウルトラ失楽園』とタイトル変えてもいいんじゃないでしょうか?それならなぜベリアル=ルシファーが禁断の力を欲してまでウルトラキングをも越えようとしたのかを描かないとテーマが空洞化しちゃうんじゃないでしょうか?正義のない力に意味はないというけれど、その正義って見方によってどのようにもとれるわけで(例えばバルタン星人にとっての正義と人間の正義は視点が違うだけの問題だからね)。
しまりのないバトルが延々と続いて正直飽きてしまった。あとウルトラマンはやっぱり都市との縮尺の対比があってナンボではないかなぁ。