ジュリー&ジュリア

ジュリー&ジュリア(Julie&Julia):★★★
監督:ノーラ・エフロン
出演:メリル・ストリープ, エイミー・アダムズ, スタンリー・トゥイッチ

シャンテシネで鑑賞したので、逃れようなく『(500)日のサマー』の予告を見せられたんだけどもはや拷問。涙が止まんなかったよ。
で、本編。ジュリア・チャイルドにとっては彼女の書いた料理本というのは自分にはできない妊娠の代替行為であることが暗に示されているのだけど、それに対して現代のジュリーがブログにのめりこむのは単に自己満足でしかない。ジュリアの代替行為は結果的に素晴らしい本となってアメリカの食卓を豊かなものにしたけれども、ジュリーのブログは旦那に言われた通り「気楽に始めていつでもやめられるもの」でしかないので、誰かの人生を変えるほどの重みはない。ここに活字文化とネット文化の重みの差があるのだと思うのだけど、要するにブログなんてものは個人の意見を無秩序に発するものにすぎなくて、それが更新が止まった手基本的に誰もこまりゃしないんですよね。それに対して本というものは(『レディ・イン・ザ・ウォーター』でも述べられてたけど)、人や歴史を変える力すら持ちうるメディアなわけです。
ということで、このメディアの持つ力の差と、それを作る人の人生の面白さの差が、そのまま映画の出来に直結してしまったかな、という気がします。つまりメリル・ストリープ演じるジュリア・チャイルドの破天荒で独立独歩な人生の魅力に対して、彼女の本のまねごとをして自己実現をした気になっているジェリーの人生は非常に小さく、ある意味においては今日的なのだけど、どこにでもある風景以上のもでしかなく、正直退屈なものでした。なぜジュリアがジュリーのブログに不快感を示したのか、その回答がないのも気になります。
この映画、ジュリア・チャイルドだけに焦点を当てたほうがずっと面白かった(マッカーシー時代のリベラリストの夫の話なんか非常に魅力的で掘り下げてもいい話題)と思うんだがどうでしょ?
メリル・ストリープは相変わらずうまいです。