サロゲート/Dr.パルナサスの鏡/脱獄王

サロゲート:★★
この映画には愛がない。いや、作り手の創作物に対する愛情が欠けているという意味じゃないですよ。もっと根本的に物語から「愛情」の問題が欠けている、と言いたいわけです。劇中ブルースウィリスが女弁護士(のサロゲート)に対して「中身は男なんじゃないか?」(もっと下品な表現で)とツッこむシーンがあるのだけど、外見だけはいくらでも作りもので見栄えが良くできる世界では、中身がどんな人間か判断できないわけです。実際ブルース・ウィリスサロゲートは髪がある肌もつやつやなものに対して、実態はハゲ中年オヤジなのですから、これを世の中の人みんながやってるわけですよね。はたしてこんな世界で愛情なんてものが生まれるのでしょうか?内側がどんな人間か判断できなければ人間関係が根本的なところで成り立たないし、そもそもあくまでサロゲートはロボットなので、生殖行為ができないんですよね。これは人類存亡の危機ですよ、映画内での危機とは別の意味で。
というわけで世界観に全く説得力がないので、89分というハリウッド大作とは思えないランニングタイムも都合がいい展開のてんこ盛りにしか見えず、退屈になってしまいました。「そんなことできませんよ」といってたことがものの十数分後にひっくり返る脚本のテキトーさはちょっと近年のハリウッド大作でも眩暈ものかも。『ブレーキ・ダウン』というタイトな傑作を作ったジョナサン・モストウとは思えない作品。


Dr.パルナサスの鏡:★★★
原題は"The Imaginarium of Dr. Parnassus"(「パルナサス博士の幻影館」)。テリー・ギリアムの幻影館といっても過言ではないぐらいのイマジネーションあふれる映像は魅力的。
お話はファウストの翻案的な内容で、永遠の命や死、若さといったもので人間(パルナサス博士)を誘惑する悪魔のお話。なので、正直ヒース・レジャーは添え物なんですな、本来なら。でもこちらにフォーカスがあてて脚本を書いているうえに、途中で書き換えちゃったものだから、ヒース・レジャーの人物が結局どんな人物だったのか漠然としたまま幕が下りてしまったような気がします。トム・ウェイツの悪魔とモンティパイソンのスケッチ的な「警察に入ろう」のミュージカルシーンに免じて★3つ。
トム・ウェイツは『ドミノ』では全く逆の役演じてたよね?


脱獄王:★★
いや、板尾創路には少なからず期待してたのですよ、特に役者としての技量については。で、役者としては少なくとも松本人志よりも幅があると思った。ほぼセリフなしでありながら異常な存在感をかもしだしていたので。あのオチのためにずーっとボケずに耐えるのには相当の覚悟が必要だと思ったけど、でもそのひっぱりに耐えられるオチでは、残念ながら、ない。