ゴールデン・スランバー/ラブリー・ボーン/涼宮ハルヒの消失

ゴールデン・スランバー:★★★
主人公たちは自分と同じ年(30歳!)なので、同じ時代を共有しているはずなのだけど、共通項がまるでない。描かれるのは70年代末から80年代バブルごろのホイチョイ的な学生生活。10年前って言ったら2000年だぞ!ビートルズ聞いて熱心に討論してる学生なんていねえーよ!物語の作り手(原作者と監督)の過去を投影してしまっていて恥ずかしい。
作品自体は半歩ずらしたミステリーで堤の抑えた時の演出みたい。物語の展開上都合がよい人物を配置していて、作為的(特に殺人鬼のくだりはどうリアクションとったらいいものかこまった)。
首相暗殺犯に仕立て上げられた男の逃走劇、という点ではラストは正しいのかもしれないけど、あの最後では結局個人は体制にかなわないことを示していてもどかしい。
終盤がデジャヴだなと思ったら『笑う警官』と同じ展開なのだった。そんなあからさまな放送妨害したら視聴者が疑問持つでしょ!
なんか色々とおしい映画。


ラブリー・ボーン:★★☆
快不快でいえば不快な映画。そりゃ少女が殺される作品なんだから不愉快になるのは当然ではあるのだけど、問題は描き方にある。事件にとらわれないで、解決しなくても前を向いて一歩踏み出すことが残された家族のためにもなるし、殺された魂のためにもなる、という結論は都合がよかないか?殺された人間は復讐なんて望んでないし、天国で幸せにやってますよ、というのはかくあってほしいというまやかしではなかろうか。それでいて映画的正義を作中求めていない(連続殺人犯演じるスタンリー・トゥイッチに正義を下すのは偶然の産物であって、彼への裁きは誰も知らない)という妙なリアリズムはいかにもバランスが悪い。
何か吹っ切れたスーザン・サランドンの好演が全く活かされていないのももったいない。


涼宮ハルヒの消失:★★★☆+☆
+☆はファン補正ですよ。『アバター』よりも上映時間が長いって言うんだからビックリである。これをTVでやったらTVアニメ史に残る大傑作となったんだろうけど、かといってTVではなく映画で一気にこの流れを見せたいという制作者の気持ちもよくわかるので、非常に難しいところ。だけど、一本の映画としてみた場合、やはり160分を超える尺は長すぎだと思う。でも面白かった!
これは受動的傍観者であったキョンハルヒの世界の積極的参加者になるまでの物語。シリーズでいえば一大転換期。そのパラダイムシフトのカタルシスに心酔いしれるわけです。
でもこの映画で心を動かされたのはそういったことではないのです、実は。長門がかわいいとかそういったことでもないのです。もっと、映画を観る行為そのものについて考えられたわけです。てなことでこれに関しては別項裂きます。洋画で言うと『レディ・イン・ザ・ウォーター』に近いのではないかな、と思う次第。