クレヨンしんちゃん 超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁/運命のボタン/フローズン・リバー

クレヨンしんちゃん 超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁:★★☆
今回は脚本が『ジャングルはいつもハレのちグゥ』でシンエイ(というか水島努)との相性の良さを見せた横手美智子ということで期待して観に行ったのだけど残念な出来。
監督2作目になるしぎのあきらは演出のリズムがトコトン悪い。特に結婚式場からの展開がひどくて、ひとつのアクションがあった後に受けのリアクションを入れるのだけど、その間が長くてテンポがズタズタ。いちいち説明の台詞を字で見せるのも下手なバラエティみたいで笑えない。
脚本もあまりほめられたものでなくて、未来の嫁であるタミコと父親の関係描写の薄さ。まがりなりにも実の娘であるタミコにどうしてそこまで冷淡でいられるのか?なぜこの父親が金に、権力にこだわるのか?まるで説明がない。黄金時代のクレヨンしんちゃんならくだらないなりに説明はあったはずだけど(アカマミレとかね)。過去のしんのすけが「なぜ」未来のしんのすけに必要なのかをちゃんと説明しないのでサスペンスもちゃんと機能しない。あとなんで未来世界がアクション仮面だらけなんだ?
ただ、重要なのは終始作中に貫かれる「しんのすけは死んでいない」という台詞。これは勿論原作者の臼井義人が亡くなってもしんのすけとその家族たちの物語は語られ続けていきますよ、という作り手側からのメッセージのはず。泣けてくるね。


運命のボタン:★★★
実はオープニングの報告書でその後の展開(ボタンの背後にあるもの)がわかったしまうのだけど、これは『ダークシティ』みたいに会社側からの要請で入れさせられたのかしら?
主人公は「100万ドルもらえるけどボタンを押したら人が死ぬ」からそれを押すか押さないか迷うのだけど、押す直前まで押した後自分たちの身に何が起こるか、ということに想像が及ばないのが不思議でしょうがなかった。悪銭身に付かずとかタダより高いものはないとか言うけれど、何事にも結果があるわけです。「誰かが死ぬ」という他者が払う代償で自分たちに幸運(お金)が訪れると考えるのは非常に想像力が欠けた人たちだな、と思った次第。それともあれかね、これは日本人とアメリカ人の倫理観の差から来るものかなのかね?
ボタンを押す押さないで悩む割にはお金で苦労しているところの描写が不十分。次の日に見た『フローズン・リバー』ぐらいに苦労してたら「そりゃ悩むわな」と説得力も出てくるわけだけど。


フローズン・リバー:★★★
The 消費主義!な主人公一家。金がないない言う一方で大型テレビをレンタルしっぱなしで、お金が入ればスーパーで大量にお買いもの。この辺の金銭感覚のルーズさが今の厳しい生活に至った原因なんだろうけど、身の丈に合わない金の使い方というのは必要もないのにサブプラムローンで金を借りて家をバンバン買ってたちょいと前のアメリカ人を戯画化した感あり。
カナダとアメリカの国境の間で不法入国の手引きをしていた主人公たちに訪れるラストがバッドエンディングなのにさわやかなのは、仏教でいうところの無間道から抜け出せたからかもしれない。