グリーン・ゾーン/パリより愛をこめて/トリック 霊能力者バトルロイヤル/ ローラーガールズ・ダイヤリー

簿記の試験やら取引先の倒産やらが重なって更新遅れました。現在は転職活動を開始しています。今の仕事付いてまるっと一年経ちますが、我慢の限界です。以上余談!

グリーン・ゾーン:★★★☆
イラク戦争にて大量破壊兵器が見つからないことに疑問を感じ真実を求める一兵士の闘いの物語。この兵士の視点は勿論イギリス人であるポール・グリーングラスの視点でもあるかと。
結論から申し上げるとアクションは相変わらずすばらしいものの、物語に空虚さが漂う作品であったかと。ないはずの大量破壊兵器のでっちあげを一人の役人(グレッグ・キニア)によるものとするのは、映画的には悪役を集約させる意味で正しいのだけど、残念ながら現在(2010年)の観客が持っている情報からすると、それは物事を単純化させてアメリカがシステム的に抱える真の問題(それはブッシュが政権を握ったときから始まっているのだけど)から目をそらさせてしまうのではないかな、と腑に落ちなかったり。リアリズム主義の映画なので、ここに説得力を持ち得ないのは致命的かも。主人公(マット・デイモン)が事件の黒幕の将軍を引っ張り出したいのは単純に真実を知りたいからだけど、部下がそれについていく動機付けがなかったのが弱いところ。最後、イラク人が「決定はは自分たちでする」という言葉とともにとる行為と、その後のアメリカ人が選んだメンバーによる今後のイラクの行く末を決める会議でのカオス状態こそが監督のイワンとしているところかもしれない。これは非常に力強いものだった。


パリより愛をこめて:★★☆
フランスのブラッカイマーことリュック・ベッソンプレゼンツの「パリの武闘派アメリカ人」シリーズ第二段。監督は『96時間』と同じじだけど今回はプロットホール多すぎて乗れず!銃も持ち込めない大使館になんで爆弾持ち込めるんだ?「彼女の前歴はすべて調べた」といった直後に「彼女のことは何も知らない」というコンテクスト無視の脚本。『96時間』にあったアクションの説得力は多分にリーアム・ニーソンによるところが大きかったんだなぁと痛感。


トリック 霊能力者バトルロイヤル:★★★
実は看板に偽りアリで、霊能力者による殺し合いは展開されない。ほぼ松平健ワンサイドゲーム。でも3つある映画版では一番面白いという奇跡(2はテレビで見たんだけど、ホントにテレビドラマだった)。オープニングが森山周一郎のナレーションで始まるあたり、第一シーズンから見ているファンにはうれしいもの。死体や証拠を回収しないトリックのおそまつさや、相変わらずの密室トリックと「万練村」の名にふさわしいマンネリぶりではあったけど、「実際のところ超能力ってあるのかね?」というテーマとそれを持つことの悲劇性みたいなものを、いつもの堤的な小ネタですべりながらも、それなりに追求しているあたりは原点回帰を思わせる。とはいえ「世の名前を忘れたとはいうまい」には大爆笑してしまった(あと「馬」!)。


ローラーガールズ・ダイヤリー:★★★★
多分今年のベストワンは『告白』と『インセプション』がデッドヒートを繰り広げるんだろうけど。現時点ではこれが一番でいいや、と思ってしまったドリュー・バリモア監督(本人も荒々しいプレイヤーとして出演)による愛らしい作品。
初監督作品なのでつたないところはあるのだけど(おしの姉妹が完全に出オチだったり、ほかのメンバーやライバルの描写が弱くてあまり印象に残らない)、今まで母親の言うとおりに保守的でアメリカの理想的な女の子を演じさせられてきた女の子がとんでもない振り子運動で荒々しいローラーゲームに目覚め、女性として独り立ちするところをしっかりツボを押さえて描いている。人生の目標を見つけるのに30数年かかったライバルと17歳でそれを見つけられた主人公・エレン・ペイジの会話。「私は17で見つけたわ」「あんたは幸運ね」くー、しびれますな。父親がラストでお約束のようにおいしいところを持っていくが、エンドクレジットでダニエル・スターンだと知ってびっくりしたよ。
ローラーゲームの持つ荒々しさはフェミニズムとは一線を画す女性の強さ、男性に近いマッチョニズムがあるのだけど、一方でローラーゲームの衣装には男性のある種の性的な興奮をあおるようなところもあるのが面白いところ。
酒と麻薬(と男)が話を転がすアイテムになるところはドリュー・バリモアの人生を反映しているよう。
王道の話を現代的に描いた傑作でした。