アイアンマン2/アウトレイジ

「告白」を見る直前、直後に観たので印象がこっぱみじんに吹き飛んでしまった不幸な作品2本

アイアンマン2:★★★
バットマンブルース・ウェインとはことごとく対称的なお気楽社長トニー・スタークの物語その2。
バットマンは自警団的な制裁行為が個人に与えられてよいのか?という点からときに社会から問題視され、そしてバットマン自身が悩むこともあるわけですが、トニー・スタークはそういう小さな問題で悩みません!なにしろ世界平和を個人で実現させてしまうんですから!ところがトニー・スタークは気分屋なもんだから、これが脅威になってしまうわけです。「私のお父さんは原発の経営者よ!」を思い出させます。
ということで、前作同様笑えるスーパーヒーロー映画という珍しい体裁は引き続き取られていますので、悩みっぱなしのヒーローに飽きた人にはお勧めです。
今回は悪役のミッキー・ロークサイドと対称をなすように父と子の時をこえた和解の物語になっています。父からのときを超えたメッセージには目頭が熱くなるものがあります。それだけに、ミッキー・ローク側の父と子の物語の描き方の浅さが惜しいしだい。
前作からの変更点でもったいないのはトニー・スタークの友人ローディがテレンス・ハワードからドン・チードルになってしまったこと。この役を演じるにはドン・チードルは誠実すぎた。音楽がラミン・ジャワディ(プロデュースド・バイ・ハンス・ジマー)からジョン・デプニーに変更になったのも残念。前作のかっこいいテーマ曲が使われなかったのは痛い。やはりヒーローものは作品をまとめるテーマ曲があってナンボでしょう。


アウトレイジ:★★★
広告見たときになんで「全員悪人」というキャッチコピーなのにエンケン遠藤憲一)がいないかね?と思ったのだけど、作品見て納得。このキャストじゃエンケンでたら完全にジョーカーであがりだわ。北村総一郎が頭でその下に三浦友和なんていう組は本来の映画なら滅びるでしょ(ラストから逆算すると正しいキャスティングなのだけど)。小日向文世そのまんま東にあて書きしたんじゃないかなぁ?石橋蓮司は出てるだけで笑いが取れる役者になってしまった。
初期の作品、特に「ソナチネ」に代表されるような死ぬことに意味など見出さず、その先に何もないことを見透かしてしまっている冷たさがなくなって、「死んじゃ結果わかんないじゃん」という台詞に観られる生への泥臭い執着みたいなものがあって、残酷な描写の羅列されながらも、以前の作品よりも人間らしい温かさが感じられた。でもそれって武の映画に求めてるものではないのだな、残念ながら。火傷するような冷たさに欠けてしまった。
古いタイプのヤクザが「約束」という言葉とお互いの信頼関係で成り立っているあやふやなものを信じて皆滅んでいく映画。そういうものを信じない、合理的な、ヤクザだけが生き残っていく、古いものにサヨナラする映画。しかしながら映画がとる裏切り行為はパターン化されたもので同じエピソードを観ている気分になる。本来はそういうパターンにサヨナラしなきゃいけなかったんじゃなかろうか。
言葉を大事にしない人たちの映画であった。