ザ・ウォーカー/宇宙ショーへようこそ

ザ・ウォーカー:★★★
あー、あの映画とあの映画が好きなんだな、というのが伝わってくる映画。依り代となっているのは同じワンショットアクションのテクニックを使っている『トゥモロー・ワールド』かと思われる。キリスト教が作品を理解する上で重要な要素となっているのも共通か。
しかしだね(『トゥモロー・ワールド』ではそれが前面に出てなかったから気にも留めなかったのだけど)、文明を失った人類が再スタートを切る上での拠り所としてキリスト教は絶対必要なのだ、というある種の使命感にも近い考えには八百万の神の国が住む国の人間としてはピンとこないどころか、むしろおごり高ぶるのもいいかげんにしろよ、と思ってしまうわけです。
この作品はアメリカの話だから、キリスト教が拠り所になるのも当然、という意見もあるかもしれないけど、いやちょっと待ってよ!アメリカは移民の国でしょ、ユダヤ教徒イスラム教徒もいるじゃない、と言い返したくなるわけです。
ゲイリー・オールドマン扮するキャラクターはその本(原題で何の本かネタバレしてるから書いちゃうが)にこそ世界を支配する力があるというけれど、そんなもんなくても我々は本来秩序を持って生きてきたのだよ。とゆーか、この世界の大部分はその本がなくても秩序だって成り立っているわけさ。それともなにか、あの本がない世界は秩序だってないと言いたいのかね?それはラテン語を話さない人種を「蛮族(バーバリアン)」と呼び自分たちから切り捨てたローマ人たちの無知と同じではなかろうか。


宇宙ショーへようこそ:★★★
うわっ、また自分と同じキャラがいるよ!というのは余談。公開から一週間後に劇場に行ったのだけど、まだ限定のフィルムを配っているところから考えるに相当客入りが悪い模様。でもこの出来では仕方のないことかも。
そもそも宇宙ショーをやっている目的が最後まで分からなかったのだが。これじゃタイトルに偽りありでしょ。しゃべる宇宙犬ポチと宇宙バイキンマンことネッポとマリーの過去の因縁もなにがあったんだかわかりゃしないし、ネッポの目的もあいまいなまま。この映画、構造に問題があって、主人公なつきとその仲間が宇宙に行くストーリーと宇宙ショーの裏に隠された陰謀が全くうまく結びついてないのだ。
一方でタイトルを「宇宙へようこそ」とすればはとてもよくできている部分が多い。働く子供たちというテーマ、永遠に会えないことが前提での「またね」と言える関係性、非日常が日常になる過剰な刺激による感覚のマヒ問題。特に働く子供たちの各エピソードが素晴らしい。これTVシリーズにした方がよっぽど面白かったんじゃなかろうか。
脚本は饒舌なところと下っ足らずなところのバランスが悪くて決してうまくはないのだけど(どーしてその状況で自分が「お姉ちゃんである」ふりをしなきゃならん理由をダラダラ言うかね?)、子供たちが生き生きと動く姿をアニメートする演出は素晴らしい。てことで差し引きで3★。