ヒックとドラゴン/ベスト・キッド/特攻野郎Aチーム

立て続けに吹替えで3本洋画を鑑賞。

ヒックとドラゴン(3D吹替):★★★★
映画の評価というものは映画が終わるまで下せないものだということを痛感させられた一本。エンドロール直前まで99%傑作だと思っていたのに(ヒックの運命も含めてよ)、ラストのナレーションで違和感を持ってしまった。
この映画が『アバター』と同じ異文化間の相互理解であることは予告の時点で火を見るより明らかなのだけど、それらなら何故ラストでドラゴンたちを「ペット」呼ばわりするのだろう。人間とペットという関係は人間が上で動物が下という主従関係である。言葉がしゃべれなければ人間よりも劣るのだろうか?本作品のクリス・サンダースによる『リロ・アンド・スティッチ』もはみ出し者同士による相互理解の話だったのだけど、あれではリロとスティッチの関係は対等だった。同じ関係性を今回の作品になぜスライドできないのだろうか。
極端な話、イスラムテロリストとアメリカ人の相互理解の話を語っていて、ラストでお互いを理解したムスリムアメリカ人の関係がアメリカ人が上に立ってムスリムを支配する主従関係になったようなものだと思うのだが。「あいつら(ドラゴン)は仲間を何百と殺しているんだぞ」「こっちだって何千と殺したじゃないか」という現在社会の憎しみの連鎖を想起させるせりふまで持ち出しているだけだけに、ラストの詰めは甘いと思った。
それ以外は傑作。ドリームワークスのお家芸である皮肉とギャグとパロディをできる限り削って、今までと違ったものを作ろうとしている心意気やよし。これでドリームワークスのアニメにも振り幅ができた(とはいっても『プリンス・オブ・エジプト』みたいな真面目なアニメも作ってる会社だが)。3Dに関しても、『アバター』以降の作品では唯一3Dでなくてはならない立体感を表現していた。


ベスト・キッド(吹替):★★★★
この邦題は原題の『カラテ・キッド』よりも作品の本質を突く正しいタイトル。生意気な少年が良き師を得て技だけでなく心を鍛え、それを目の当たりにした間違った道を歩まされていた少年たちも心を正すという「ベスト・キッド」の話だから。
オリジナルの良いところは変えないで、舞台を中国にし、技をカラテからカンフーにしたことで変えるべきはうまく変えた。「ワックスぬる・ワックスとる」を「ジャケット着る・ジャケット脱ぐ」に翻案するセンスの良さ。直球の話で収まるべきところにすべてが収まっているのに、140分を全く長く感じさせない。てっきりあのあと怒った師匠がふがいない弟子をボコ殴りにするところをジャッキーが止めるエピソードも入るもんだと思ったけどそーいう映画ではないですか。そーですか。
ジェームズ・ホーナーは『アバター』より良い仕事をしていて間違いなく近年で最高の仕事。


特攻野郎Aチーム the Movie:★★★☆
監督が『ミッション:インポッシブルⅢ』を撮影直前に逃げだしたジョー・カナーハンで、音楽は『ミッション:インポッシブル』を公開直前でクビになったアラン・シルベストリ。CIA長官が1作目でIMFのお偉いさん演じてたヘンリー・ツァーニ(この人『今そこにある危機』でもCIAに勤めてる)。と、なんらかの意図があるのではないかというぐらい『ミッション:インポッシブル』関係者が集まった本作品。これ、『スパイ大作戦』をトム・クルーズのスター映画にしてしまった『ミッション:インポッシブル』シリーズに対するカナーハンなりの解答なのだと思う。
つまりTVシリーズで愛されていた要素は全部残しましょうよ、と。ハンニバルは作戦成功の暁には葉巻を吸うし、コングは飛行機だけは勘弁なだし、フェイスは女ったらしだし、クレイジーモンキーは精神病院に入ってるし。ちゃんとTV版に仁義通してる。その上でTV版で描かれなかった「この連中がどうしてつるむようになったのか?」「どうして追われる身になったのか?」「どうして飛行機だけは勘弁な」なのか、に関しては発展させましょうよ、と。そういう点でTVの映画版としては理想的な作品。
駄目なのはシルベストリ、お前だ!なんで『ミッション:インポッシブル』クビになったのか理解してない。だーかーらー、皆が聞きたいのはあなたのオリジナルテーマじゃなくってTVのテーマ曲なんだってばさ。
吹替えに関しては『シンプソンズ』騒動がウソのような素晴らしいFOXのお仕事。あれで懲りたのだと思いたい。