キック・アス/ソーシャル・ネットワーク

グリーン・ホーネット』なんて見ないで『完全なる報復』見ればよかったなー。脚本がカート・ウィマーだって知らなかったよ。

キック・アス:★★★☆
ヒロイックなエピソードを伴わないヒーローの誕生がテーマなのだけど、明らかにその誕生に悲劇性があるビッグダディとヒットガールの物語の方が面白いのは監督としては誤算だったのではないだろうか。やっぱりボンクラな高校生が悪戦苦闘してヒーローのふりをしようとする痛々しい話より、動きがスマートで多少病んだヒーローとヒロインの話のほうが映画としては吸引力が強い。
ヒットガールの華麗なアクションに人間の肉体表現の可能性というものを考えさせられる。ガンカタがここでも活きていたうれしい限り。


ソーシャル・ネットワーク:★★★☆
純粋に無垢な悪の話。ハタから見るとホントに迷惑な主人公だよ。自分が悪いことしてるって言う自覚がないんだもの。最後明らかになるフェイスブック立ち上げの動機の一端は歪んだ愛情のオブセッション。こりゃサイコパスですね。
日本の映画会社は早くひろゆきを主人公にした映画を作ること!

2011年映画初めはアンストッパブル

アンストッパブル:★★★?
監督:トニー・スコット

アンストッパブルとはトニー・スコットのことだと思った次第。チャカチャカした編集と無駄なズームイン&アウトの繰り返しと映像が落ち着くことなし。話も起承転結のつけ方おかしいんじゃないかというぐらい延々とクライマックスの連続。まさに止まらない監督。
なのだけど、自分の体調管理が悪くて中盤から舟こいじゃったんですな。眠くて眠くて。まさか大好きなトニー・スコット映画でこんな状況に陥るとは・・・。
自分の理解した範囲では、今回またしても親子のモチーフが使われています。デンゼル・ワシントンクリス・パインの関係は師弟関係とも言えるし、もっと言えば『トップガン』『デイズ・オブ・サンダー』『クリムゾン・タイド』の擬似親子の関係でしょう。父親に反抗する息子の姿がクリス・パインに透けて見えました。また、クリス・パイン自身父性を失いつつある父親であり、その父性は男らしい仕事により取り戻されるという、一世代昔の父親観がありました。
体調万全で見れば多分面白い映画だったはず。こんなんで今年大丈夫なのかね?

2010年度ベストテン

毎年恒例のベストテンです。例によって劇場で見た新作映画のみ選考対象になります。2010年は全部で88本鑑賞と、いつもの年に比べて1割ぐらい減少してます。『クレイジーハート』『冷たい雨に撃て、復讐の銃弾を』『僕のエリ 200歳の少女』『キック・アス』を見られなかったので、ベストテンとしては不完全な気がしますが、これは毎年のことなのでしょうがない。『キック・アス』は1月15日から近所の劇場で公開なので、11年度の選考対象となります。

1:告白
2:インセプション
3:ローラーガールズ・ダイヤリー
4:涼宮ハルヒの消失
5:ヒックとドラゴン
6:十三人の刺客
7:ロビン・フッド
8:ベスト・キッド
9:ガフールの伝説
10:借り暮らしのアリエッティ

10年は10本ちゃんと選べたので豊作だったと思います。特にアニメが豊作でした。邦画はがんばってる映画(告白・十三人の刺客)と箸にも棒にもかからない映画との差がますます増した一年でした。特にテレビ局がらみの映画は軒並み全滅。テレビ朝日が絡んでる『十三人の刺客』は奇跡的な作品といえるかもしれません。
3D元年と世の中は言いますが、『美女と野獣』や『バトル・ロワイヤル』を見る限り、過去の作品を3Dコンバートすることは無意味だし、『アリス・イン・ワンダーランド』や『キャッツ&ドッグス』のようにツマラナイ映画は3D化しても面白くはならないと思いました。400円払って重いメガネをかけることの意味がわからないです。ただ、『ヒックとドラゴン』や『ガフールの伝説』といった3Dの特性を本当に理解した映画にはお金を払う価値がありました。これからは面白い3Dと無駄な3Dの二極化が増していくのだと思います。2Dと3Dの選択肢を、特にコンバート3Dに関しては必ずつけて欲しいものです。

ロビン・フッドに救われる

ロビン・フッド:★★★★
監督:リドリー・スコット
脚本:ブライアン・ヘルゲランド

リドリー・スコットにとっては『キングダム・オブ・ヘブン』以来の傑作。★一個足りないのはジマー成分が足りないという理由だけ。
ここ最近映画とはいえないようなシロモノを見せられ続けてきたので、感想を書く気もおきず、このまんまサイトが自然消滅してしまうのではないかという危機感すら持っていたのだけれど、そこに颯爽と現れたのがこの作品であります。実に、実に豊かな映画だった。その「豊かさ」というのは映像の豪華さとは違って、マンパワーがギリギリまで使われているという動員された人間の力が映像に現れているところをもってしての「豊か」さ。俳優の顔も個性にとんで「豊か」。そして物語のシンプルでありながらぶれることのないヒーローの創造にかける語りも「豊
か」。
グラディエーター』『キングダム・オブ・ヘブン』の流れに連なるエピック三部作の最終章は、前2作と同じく、虐げられた人々を率いることを運命づけられた男が世界と向き合う姿を描いた話だった。今回はともすればならずものにすらなりえた男がひょんなことから英雄になる運命の面白さに注目している。ただ、それも運命のいたずらではなく、英雄になる器の男だったという運命論的なところから描いているところに注目したい。
君主とは国民があってはじめて存在できるものであり、君主があるから国民が存在できるというのは驕りであるという君主論。十字軍を通したイスラム社会への目配せ。全てが現在の社会(特にアメリカ)に通じている。特に『キングダム〜』から顕著だった外社会を使ったアメリカ批評になっている。
映画としては冒頭からロビン・フッドの物語で重要な人物に災難が起こって特にケビン・コスナー版見ている人は驚く仕掛け。ここから一気に映画は「新しいロビン・フッド」の叙事詩を語っていく。ジョン王はわかりやすい愚弟で、その友でありフランスに通じた家臣の残虐さはロビンのヒーロー性を際立たせる。これぞ映画ならではのケレン。リドリーの執念ともいえる『プライベート・ライアン』への目配せ的な浜辺での激突。黒澤へのこだわりとしてはオープニングに『蜘蛛巣城』の城落とし、ラストに『七人の侍』の雨の中の激突を浜辺の潮で表現したところが見られる。
こんなわかりやすく面白い大作に全然客が入らない日本の映画業界ってどうなの?と思ってしまった。

今月の映画

仕事が忙しいからといって更新をサボってたわけではなくて、ブログに書きたいと思わせるほど面白い映画を見てないんですな。

SP 野望篇:★★☆
マチェーテ:★★★
リトル・ランボーズ:★★★
ゲゲゲの女房:★★
ハリー・ポッターと死の秘宝 Part I:★★☆
バトル・ロワイヤル 3D:★★★☆(映画自体は4★だが・・・)

これまでの楽しい映画の話をしよう(十三人の刺客/ガフールの伝説/ナイト&デイ/エクスペンダブルズ)

失敗作の欠点を指摘して溜飲を下げるというのはあまり上品なことではないので、楽しかった映画の話だけします。

十三人の刺客:★★★★
武士道だの侍だのかこつけても、実際殺し合いになったら泥まみれ、血まみれでみっともなくただひたすら必死にならねばならないのだ、ということを終盤50分ちかくかけて延々と描いた力作。変に現代的なテロリズム思想への是非などを問わず(「桜田門外ノ変」のことだ)勧善懲悪に徹しているところが潔い。そういう意味で稲垣吾郎を同情の余地のない鬼畜に仕上げた脚本は見事。この人感情のない役やらせると光る。
行燈の明かりだけを活かしたライティング、朝もやの神秘性、雨と映像デザインも優れている。実は十三人いる刺客のうちその半分は賭場に一瞬だけ姿を見せる福本清三ほどの印象も残らないのだが、現在の役者の線の細さだろうか。三池組から遠藤憲一北村一輝あたりを刺客に呼ぶと印象が随分違ったかも。岸辺一徳の役どころは石橋蓮司だよね。大杉漣は老中あたりでどうか?そうなると竹内力哀川翔が欲しくなるところだが、それをやると作品がのっとられるので、やらなくて正解。松形弘樹は年齢を感じさせない殺陣の凄みを見せる。GPミュージアムの作品ばかりに出てもうだめかと思ったが、まさかこんな形で大作に復活してくれてうれしい限り。三池監督としては「スキヤキウェスタンジャンゴ」で作った大きな負債を見事に返した作品といえるかも。しかしこの企画は本来東映が面倒見なきゃいかんよね。


ガフールの伝説(3D吹替):★★★☆+☆
意外な拾いものである。ザック・スナイダーの監督作品ということを考えるとこれ以上は求められないぐらいの良品じゃないだろうか(「ウォッチメン」も「300」ものれなかったので)。
ヒックとドラゴン」もそうだったけど、3Dと飛翔シーンの相性のよさを証明するような作品。この臨場感は2Dでは再現できないだろう。
物語自体は実は人間に置き換えて「神話の再発見」の物語とすることも出来るのだけど(それは「300」が神話的なヒーローの物語の再発見であり、「ウォッチメン」がアメコミヒーローの神話性の再構築だったのと同じなのだが)、フクロウにこだわることによって戦術の飛行シーンのダイナミズを生み出すことが出来た。
「300」では戦争の美化というマッチョニズムに少なからず違和感を持ったのだけど、今回の作品では伝説のヒーローをして「きれいな戦争などない」といわせることによって、その反省をしている面があり好感が持てる。
吹き替えに関しては榊原良子の氷ような冷たさを持った悪の女王に尽きる。気高く冷酷で計算高い女をやらせたらこの人の右に出る人はいないだろう。永井一郎もここぞというところに登場し、吹き替えのクオリティで+☆。主演も意外に悪くなかった。


ナイト&デイ:★★★☆
楽しいスタア映画。スターにお金を払う価値という意味について考えさせてくれるという点では「エクスペンダブルズ」に近い。明らかに「ミッション:インポッシブル」のイーサン・ハントのパロディキャラなので、主役のスパイにはトム・クルーズ以外適切な役者が思い浮かばない。浮世離れしたセカイに迷い込むラブコメキャラという点でキャメロン・ディアスの配役も見事。難しいことは考えず流れに身を任せ、スターの華麗な姿をめでるという「だけ」の映画で、背景に政治的なものなど何も存在しないというひとつ昔の映画ともいえるが、そんな映画がたまにあってもいいじゃない。しかし拘束中のスパイが危機を乗り切るシーンを朦朧としたヒロインの視点でブラックアウトさせて省略するなんて大胆な作品だ。


エクスペンダブルズ:★★★
映画の出来としては同じスタローン監督の「ロッキー・ザ・ファイナル」や「ランボー 最後の戦場」などより数段落ちるのだけど、見る前からこんなにワクワクした経験はいつ以来?スタローンとシュワルツネッガーの競演(しかもブルース・ウィリスのおまけつき)シーンを演出できるのはよっぽどのコントロール能力のある人にしか出来ないと思ってたけど、それをスタローン自身がしてしまうところがスタローンの俳優兼監督としての能力の優れた部分ではないだろうか。ほかの監督だったら絶対まとめきれないよ。
映画としてはあまりに直球(女のために独裁者倒しに行くぜヤッホォ)なんのひねりもなく、なんの驚きもないのだけど、これはスタアが一堂に会することに意味がある映画なので欠点とはならない。アクション映画の背景に何の政治的なコンテクストも存在しなかった一昔前のアクション映画へのノスタルジイ。それをアナクロニズムととらえるかどうかは観客次第で、自分はそんな映画があってもよいと思った。
それよりも「ランボー」に引き続き近年のスピルバーグばりに人体破壊シーンにこだわるスタローンのいままで見られなかった変態性が垣間見られて興味深かった。この人65才すぎてどこに向かうんでしょ?

フリーパス2010

今年もTOHOシネマズのフリーパスの季節です。交換のタイミングで今年は去年に比べるとぐっと鑑賞数が減ってしまいました。転職して小忙しくなったので細かい話はまた今度。

バイオハザードⅣ アフターライフ:★★
BECK:★★★
悪人:★★☆
十三人の刺客:★★★★
TSUNAMI:★★
大奥:★★☆
君に届け:★★★
ガフールの伝説(3D吹):★★★☆
美女と野獣(3D吹):★★★☆(作品自体は4★だが・・・・)
ナイト&デイ:★★★☆
桜田門外ノ変:★
エクスペンダブルズ:★★★
インシテミル 七日間のデスゲーム:★★

存外にあたりが少ないという印象。